ARTとはどういう治療でしょう?

卵子や精子を体外に取り出し体外で受精させる技術をART(Assisted ReproductiveTecnology)と言います。

主な治療方法

ARTの適応

ARTの対象となる方の説明図
日本受精着床学会HPより引用

ARTの成績

1回の胚移植あたりの平均の妊娠率は、新鮮胚移植周期で体外受精22.8%、顕微授精18.7%、凍結融解胚移植周期34.7%です。(日本産婦人科学会2018年成績)

一般に、女性の年齢が高くなるにしたがい妊娠率は低下し、流産率は増加します。

一回の胚移植あたりの妊娠率は決して高いものではありませんので、複数回の移植が必要になる場合もあります。

当院の成績
平均年齢(歳) 妊娠率(%)
2017年 38.6 41.5
2018年 36.8 54.7
2019年 37.0 45.2
2020年 37.0 46.2

※凍結融解胚移植あたりの妊娠率

ARTの治療は毎月行える治療ではなく、妊娠に至るまで治療期間が長期になる場合があります。

ARTの方法

ARTの一連の流れの説明図
日本受精着床学会HPより引用
  • 1 飲み薬や注射などの排卵誘発剤を用いての卵胞刺激飲み薬や注射などの排卵誘発剤を用いての卵胞刺激飲み薬や注射などの排卵誘発剤を用いての卵胞刺激
  • 2 経腟超音波下での採卵
  • 3 卵子・胚の体外培養
  • 4 採取した精液は、体外受精(媒精)や顕微授精法に使用するように調整
  • 5 受精:体外受精(媒精)または顕微授精法の施行
  • 6 受精確認を行いさらに胚を培養
  • 7 胚移植
  • 8 胚凍結保存

1 卵巣刺激

体外受精は、複数の良好な卵子を採取することが大切です。そのため、卵胞を発育させる排卵誘発が必要となります。
通常、月経の3日目より連日、排卵誘発剤の注射や内服薬を使用します。
数種類の排卵誘発法がありますが、その方にあった方法を選ぶことが重要です。
卵胞がしっかり育ち、採卵日が決定するまでに、連日注射をしていただきながら、複数回の診察が必要となります。

2 採卵

卵子を卵巣から細い針を使って体の外へ取り出します。
当院では原則として局所麻酔で行うため入院の必要はなく外来で行われます。
通常の診察と同様に経腟エコーで確認しながら卵胞を穿刺します。

3 受精

精子は採卵当日、採取して持参していただきます。
お預かりした精子は、洗浄濃縮を行い良好な精子を回収し、受精に用います。

受精させる方法には2通りあります。

媒精

精子と卵子を一緒の容器に入れ培養し受精させます。

顕微授精

顕微鏡下に1個の精子を1個の卵子に細い針で注入します。
精子の数が少ない場合や運動率が悪い等の場合に適応になります。

4 胚培養

正常に受精した胚を数日間培養器の中で育てます。胚は細胞分裂を繰り返し成長していきます。
その過程で、胚のグレードの判定が行われます。
質の低下した胚は、細胞分裂が停止し胚盤胞まで到達しません。受精後5日から6日で胚盤胞まで到達した胚は、一般的に良好胚と判定されますが、100%の妊娠率が得られるわけではありません。

順調に発育した良好胚は、胚移植や凍結保存を行います。

体外培養ヒト胚(卵)の発育を示す写真
日本受精着床学会HPより引用

5 胚移植

正常に受精し、細胞分裂した胚を子宮内に移植します。やわらかいチューブを用いて行いますので麻酔などは必要なく短時間で終了します。
当院では受精卵を一度、全て凍結保存し、内膜の状態を整えたところで胚移植を行っております。(凍結融解胚移植)

費用・助成金について

費用

採卵の場合

およそ1回の治療で35~45万円の費用がかかります。

※排卵誘発剤の種類や量により費用は前後します。

※顕微授精をおこなった場合は3~4万円の加算となります。

胚移植のみの場合 (以前に凍結保存してある受精卵がある場合)

凍結融解胚移植のみを実施。

胚移植料(6万5千円)

※黄体ホルモン等のお薬の料金約2万円程度が別途かかります。


特定不妊治療費助成制度について

ARTの治療を行った場合、県・市町村からの助成金補助制度があります。

新潟県・新潟市の場合
申請回数
助成金額 助成金額 治療方法により助成金額は変わります。
1回の治療につき30万円又は10万円
(助成金は、申請後に支給されます)

※その他、お住まいの市町村により助成が受けられる場合があります。